大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京地方裁判所 昭和53年(ワ)1694号 判決

原告(反訴被告)(以下単に原告という) 野崎銀之助

右訴訟代理人弁護士 松井清旭

被告(反訴原告)(以下、単に被告という) 茂木正之助

〈ほか五名〉

右六名訴訟代理人弁護士 秋山知也

主文

一  被告らは、別紙第二物件目録記載の建物につき東京法務局板橋出張所昭和四九年二月一四日受付第六〇一九号の所有権保存登記の抹消登記手続をせよ。

二  被告茂木正之助は、同建物につき同法務局同出張所昭和五〇年三月二六日受付第一二二七九号の所有権移転登記の抹消登記手続をせよ。

三  原告のその余の請求を棄却する。

四  被告茂木正之助の請求はいずれも棄却する。

五  訴訟費用は、本訴反訴を通じ、これを五分し、その四を被告らの負担とし、その余を原告の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

(本訴)

一  請求の趣旨

1 被告らは、別紙第二物件目録記載の建物につき東京法務局板橋出張所昭和四九年二月一四日受付第六〇一九号の所有権保存登記の抹消登記手続をせよ。

2 被告正之助は、同建物につき同法務局同出張所昭和五〇年三月二六日受付第一二二七九号の所有権移転登記の抹消登記手続をせよ。

3 被告正之助は、原告に対し、別紙第一物件目録記載の建物を明渡せ。

4 訴訟費用は被告らの負担とする。

5 3項につき仮執行宣言

二  請求の趣旨に対する答弁

1 原告の請求をいずれも棄却する。

2 訴訟費用は原告の負担とする。

(反訴)

一  請求の趣旨

1 被告正之助が別紙第三物件目録記載の土地につき、原告に対し、期間昭和四八年三月一日より三〇年間、賃料一か月金二三〇〇円、賃料支払時期毎月末日までの普通建物所有を目的とする賃借権を有することを確認する。

2 被告正之助が別紙第二物件目録記載の建物につき所有権を有することを確認する。

3 反訴費用は原告の負担とする。

二  請求の趣旨に対する答弁

1 被告正之助の請求をいずれも棄却する。

2 反訴費用は被告正之助の負担とする。

第二当事者の主張

(本訴)

一  請求原因

1 原告の先々代亡野崎喜之助(以下「喜之助」という。)は大正九年二月ごろ、訴外藤巻隆造から同人所有にかかる別紙第一物件目録記載の建物(ただし、増改築前のもの)を買い受けた。

2 喜之助は、被告の先代亡茂木嘉男(以下「嘉男」という。)に対し、昭和一八年三月ごろ、右建物を貸し渡した。

3 嘉男は右賃借に当たり、喜之助との話合いによって同人の負担で建物内部の改造、改装を行い、更に入居後、右建物に左記のとおり増改築を加えたところ、右増改築部分はいずれも同建物に附合し、建物の現況は別紙第一物件目録記載のとおりとなった。

(一) 昭和二五年ごろ 床面積三・三平方メートルの増築及び別紙第三物件目録記載の土地(以下「本件土地」という)の北東角に木造瓦葺平家建の離れの間(床面積九・九一平方メートル)の新築

(二) 昭和三三年ごろ 右離れの間と別紙第一物件目録記載の建物(右三・三平方メートルの増築済みのもの)との接合及び二階部分の増築

4 嘉男は、別紙第一物件目録記載の建物を増改築部分も含めて別紙第二物件目録記載の建物として、該建物につき東京法務局板橋出張所昭和四九年二月一四日受付第六〇一九号の所有権保存登記をした。

5 喜之助は昭和二一年一月二七日死亡し、原告が同人を相続した。

6 嘉男は昭和五〇年二月三日死亡し、その相続人は被告ら六名であるところ、被告正之助は、相続人間の協議で別紙第一物件目録記載の建物の賃借権を相続したが、同一建物である別紙第二物件目録記載の建物につき、訴外嘉男名義の保存登記があるのを奇貨とし、相続によりその所有権を取得したとして、東京法務局板橋出張所昭和五〇年三月二六日受付第一二二七九号の所有権移転登記を了した。

7(一) 被告正之助(昭和五〇年二月三日以前は嘉男)は昭和三六年四月以降原告よりの再三にわたる賃料増額請求にも応じず、更に前記のとおり別紙第一物件目録記載の建物を嘉男の新築にかかる別紙第二物件目録記載の建物であるとして自己の所有権を主張しているほか、その敷地である本件土地につき賃借権を有すると主張して東京地方裁判所に借地条件の変更を申し立てる(同庁昭和五二年(借チ)第四七号事件)など、原告との間の信頼関係を破壊する行為にでている。

(二) そこで、原告は、被告正之助に対し、本訴状の送達をもって別紙第一物件目録記載の建物についての賃貸借契約を解除する旨の意思表示をする。

8 よって、原告は、被告らに対し、所有権に基づき別紙第二物件目録記載の建物につき東京法務局板橋出張所昭和四九年二月一四日受付第六〇一九号の所有権保存登記の抹消登記手続を、被告正之助に対し、所有権に基づき同建物につき同法務局同出張所昭和五〇年三月二六日受付第一二二七九号の所有権移転登記の抹消登記手続及び賃貸借契約の解除に基づき別紙第一物件目録記載の建物の明渡を各求める。

二  請求原因に対する認否

1 請求原因2の事実は否認する。嘉男は、喜之助より昭和一八年三月ごろ、建物所有の目的で本件土地を賃借し、別紙第二物件目録記載の建物(ただし、増改築前のもの)を新築したものである。

2 同3の事実中、嘉男が、右新築した建物に原告主張のとおり増改築工事等を行ったことは認め、その余の事実は否認する。

3 同4の事実中、嘉男が別紙第二物件目録記載の建物につき原告主張のとおり所有権保存登記を行ったことは認め、その余の事実は否認する。

4 同5の事実は認める。

5 同6の事実中、嘉男が昭和五〇年二月三日死亡し、その相続人が被告らであること、被告正之助が別紙第二物件目録記載の建物につき原告主張のとおり所有権移転登記を了したことは認め、その余の事実は否認する。

6 同7の事実中、被告正之助が別紙第二物件目録記載の建物が自己の所有であると主張していること、及びその敷地である本件土地につき賃借権を有することを前提とし借地条件の変更を求めて東京地方裁判所に借地非訟の申立てをしたことは認め、その余の事実は否認する。

(反訴)

1  嘉男は、喜之助より昭和一八年ごろ、本件土地を左記の約定で賃借した。

(1) 賃料 一ヵ月一二円(後に改定され現在一ヵ月二三〇〇円)

(2) 普通建物所有を目的とする。

(3) 期間の定めなし

(4) 賃料支払時期 毎月末日

(二) 嘉男は、昭和四八年二月末日の経過後も本件土地の使用を継続したので、右賃貸借契約は法定更新された。

2  嘉男は昭和一八年三月ごろ、本件土地上に別紙第二物件目録記載の建物(ただし、増改築前のもの)を新築し、その後右建物に本訴請求原因3の(一)(二)記載の増改築工事等を行ったので、右建物は別紙第二物件目録記載の建物となった。

3  嘉男は昭和五〇年二月三日死亡し、被告正之助が別紙第二物件目録記載の建物の所有権及び本件土地の賃借権を相続した。

4  喜之助は昭和二一年一月二七日死亡し、原告が同人を相続した。

5  よって、被告正之助は、原告に対し、被告正之助が本件土地につき請求の趣旨記載のとおりの賃借権を、別紙第二物件目録記載の建物につき所有権を各有することの確認を求める。

二 請求原因に対する認否

1  請求原因1の事実は否認する。

2  同2の事実中、嘉男がその主張のとおり増改築工事等を行ったことは認めるが、その余の事実は否認する。

3  同3の事実中、嘉男の死亡の点は認めるが、その余の事実は否認する。

4  同4の事実は認める。

第三証拠《省略》

理由

(本訴について)

一  《証拠省略》を総合すれば、次のことが認められる。《証拠判断省略》

1  原告の先々代喜之助は大正九年二月二日、訴外藤巻隆造より本件土地がその一部である別紙第三物件目録記載の宅地二九二・五九平方メートルとその地上の建物三棟を買い受けた。右建物のうち一棟は木造トタン葺平家建居宅一四坪(以下、旧建物という。)であり、昭和一七年当時、訴外谷口某が喜之助より賃借して古着屋を開いていた。

2  被告らの先代嘉男は昭和一八年三月ごろ、東京市板橋区五丁目一〇三五番地(当時の地名)で味噌・醤油等の小売業を営んでいたが、戦時下の強制疎開によって同所より立退きを余儀なくされたため、同業者の訴外蓮沼静の夫の口聞きで喜之助より右蓮沼方の向かい側にあってそのころ半年間ぐらい空家のまま放置されていた旧建物を賃料月額一二円で借り受けることとした。

3  当時、旧建物は基礎部分が道路面よりかなり低いうえ、建物内部の荒れ方がひどく、また戸・障子等の建具は繩で結えつけてあるなどそのままではとても人の住めるような状態ではなかった。そのため喜之助は、戦時下の資材不足の故もあって嘉男に好きなようにしてくれと述べ、嘉男の費用と裁量による修理・修繕を任せたので、嘉男は旧建物について土台を取り替え、柱、間柱、貫等の不良部分を新材で補修し、天井を上げ、屋根や壁の不良箇所も葺き又は塗り替えるなどの改築を行い(以下改築後の建物を「本件建物」という。)、かつ新しい畳や建具を入れて同年七月ごろ、引越した。嘉男は右の改築等に一七二五円二五銭を費やした。

4  その後、嘉男は自己の費用で、昭和二五年七月、長男である被告嘉一郎の結婚に際し、本件建物の裏側の空地に三坪の建物を新築して本件建物と渡り廊下で接続し同被告夫婦が寝所として使用するための四・五畳間の離れの間を作ったうえ、建物前面に約一坪増築して店舗部分を拡張し、昭和三〇年ごろ、建物前面の南東角部分に被告正之助が婦人服縫製業を営むための仕事場として一・八四坪を増築し、更に昭和三三年七月ごろ、右離れの間に廊下を継ぎ足して母屋に接合させ、その上に四・九五坪の二階部分を増築した(なお、嘉男が昭和二五年ごろ、本件建物に三・三平方メートルの増築及び本件土地の空地に九・九一平方メートルの離れの間を新築したこと、更に昭和三三年ごろ、右離れの間と本件建物を接合してその上に二階部分を増築したことは、当事者間に争いがない。)。

また、嘉男は自己の費用で本件建物の店舗部分を、昭和三八年一〇月ごろ被告正之助がそれまでの婦人服縫製業をやめて焼鳥屋を始めるため、及び昭和三九年一一月ごろ右焼鳥屋をやめて文房具店を開くためそれぞれ改装した。

本件建物は以上の増築等を経て現況の建物となるに至った。

5  原告は昭和四二年五月、喜之助が買い受けた三棟の建物のうち本件建物の裏側にあった二棟の建物を取り壊し、その跡地に共同住宅を新築した。その際、残る一棟が未登記であることを知り、本件建物につき構造、床面積が旧建物のままの別紙第一物件目録記載の建物として同年九月二八日、原告名義の所有権保存登記手続を了した。

なお、喜之助は昭和二一年一月二七日死亡し、当時、既に原告の父が死亡していたので原告が家督相続した(喜之助が右同日に死亡し、原告が同人を相続したことは、当事者間に争いがない。)。したがって、旧建物についての権利は原告に属していた。

6  嘉男は昭和五〇年二月三日死亡し、被告ら六名が相続人であるところ(以上の点は当事者間に争いがない。)、右相続人間の協議で本件建物は被告正之助が相続することとした。被告らは、本件建物が嘉男によって前記のとおり改築され、更に増築等が行われるうち旧建物が様変りして現況の本件建物になった経緯にあるところから、本件建物が嘉男の所有に属するとの考えを持っており、この考えの下に右の協議を行い、更に被告正之助は昭和四六年ごろ、本件建物を建て替えるべく原告にその承諾を求めたが、承諾が得られないばかりか、原告より本件建物が原告の所有であり、これに手を加えた場合は直ちに裁判所に訴えて退去を求める旨返答されて驚き、自己の権利を擁護するためには本件建物につき登記するに如かずと考え昭和四九年二月一四日、本件建物を別紙第二物件目録記載の建物として嘉男名義で所有権保存登記を行ったうえ、同人の死亡後、相続を原因として昭和五〇年三月二六日、所有権移転登記を経由した(右各登記の存在は当事者間に争いがない。)。

以上1ないし6の事実を認定することができるところ、これらの認実事実によれば、更に次のことを認めることができる。この認定に反する証拠はない。

1  別紙第一物件目録記載の現況の建物と同第二物件目録記載の建物はいずれも本件建物であって、同一物件である。

2  嘉男が昭和一八年三月ごろ、旧建物に入居するに当たり行った改築は、旧建物の全部を取り壊してその発生材を利用しての新築ではなく、既存建物の不良部分を補修し、取り替える等の方法による改築であったのであるから、旧建物がその際かなりの程度まで壊されたとしても、改築工事により再び建物となる中間的段階を超えるほどまで取り壊されたものとは考え難いから、旧建物が最も壊された際の状態は依然として土地に定著する工作物であって不動産と認むべき域にとどまっていたものと考えるのが相当である。したがって、嘉男が右工作物に自費をもって物を附加し、その結果本件建物を完成させたとはいえ、右附加した物自体は独立して所有権の目的となり得るものではないから、結局、右改築工事により附加された物は不動産である右工作物に従として附合し、その結果完成した本件建物自体の所有権は工作物の所有者である喜之助の所有に帰したものというべきである。

3  嘉男が昭和二五年七月新築した三坪の離れの間はいわば本件建物の一つの部屋にすぎないのであるからそれ自体独立性を有するものではなく、昭和三三年七月ごろ増築した四・九五坪の二階部分も階下部分と独立して利用されるべき構造を有するとの主張・立証はないので、右いずれの部分の工事においても附加された物は本件建物に従として附合し、本件建物の所有者である喜之助の所有に帰したものである。

また、その他の増築部分は店舗部分を拡げたり、離れの間を母屋に接合するための増築であって、工事の結果、本件建物の一部分になったのであるから、その工事において附加された物は本件建物に従として附合し、右と同様喜之助の所有に帰したものである。

以上によれば、本件建物の所有権の帰属は嘉男の改築等によっても移動はなく、本件建物は当初から喜之助及びその家督相続人である原告の所有に属していたものといわねばならない。したがって、原告と被告正之助間に存在する契約関係は本件建物の賃貸借であるというべきである(嘉男の死亡によって、その相続人である被告らにおいて本件建物は被告正之助が相続する旨協議していることは既に認定したとおりであるが、右協議の趣旨は本件建物についての権利を相続させることにあるというべきであるから、嘉男が本件建物について所有権を有せず、賃借権を有するにすぎなかった以上、被告正之助が承継した権利も右賃借権であるといわねばならない。)。

二  訴外嘉男が本件建物につき東京法務局板橋出張所昭和四九年二月一四日受付第六〇一九号の所有権保存登記を行ったこと、被告正之助が本件建物につき嘉男の死亡による相続を原因として同法務局同出張所昭和五〇年三月二六日受付第一二二七九号の所有権移転登記を了したこと及び同被告が本件土地につき賃借権を有すると主張して当庁に借地条件の変更を申し立てたことは、当事者間に争いがない。

原告は、被告正之助が昭和三六年四月以降、原告よりの再三にわたる賃料増額請求に応ぜず、本件建物につき自己の所有権を主張しかつ本件土地につき賃借権を有すると主張するなどして、原告との間の信頼関係を破壊する行為に出ている旨主張するのであるが、右主張中、賃料増額請求に応じないとの点は、たとい被告正之助が任意に増額の請求に応じないので賃料の増額につき協議が調わないとしても、原告としては裁判によって増額を求めれば足りるのであるから、任意に応じないことをもって信頼関係を破壊するものであるとはとうてい認め得ないので、以下その他の点につき判断する。

既に認定したところによれば、嘉男は、喜之助より自己の費用と裁量で修理・修繕することを任されて、とても人の住めるような状態にはなかった旧建物につき当時としては大金である一九二五円二五銭もの費用を投じて改築工事を行ったうえ入居した経緯にあり、入居後も自らの費用で三回にわたり増築工事等を行い、更に内部改装等を施して、旧建物とは比較にならないほど面積、構造及び質等の点で良好な本件建物としたことが明らかであること、これに反し、喜之助又は原告は貸主とはいいながら旧建物及び本件建物につきなんらの修理・修繕も行わず、嘉男のなすがままの増・改築等を容認し、又はなかば黙認してきた形跡がうかがわれるのであって、これらの事実に照らせば、被告らが、本件建物は嘉男の所有に帰したものであり、したがって嘉男が賃借していたのは本件土地であって、被告正之助が相続により取得したのは右所有権や賃借権であると誤信しているとしても、真に已むを得ない事情がある(殊に、嘉男が昭和一八年三月、旧建物に施した改築によって本件建物の所有権が嘉男又は旧建物の所有者である喜之助のいずれに属するに至ったかは前記説示に照らして明らかなとおり微妙な法律問題であり、法律に疎い被告らがこの点を明確にし得ず、本件建物につき自己の所有権を主張してきたとしても已むを得ないものというべきであろう。)ものというべきであり、被告正之助がかかる経緯から右所有権等を主張したことが本件建物についての賃貸借契約を継続できないほど信頼関係を破壊する行為であるとは、とうてい認めることはできない。なお、甲第二号証の建物賃貸借契約書は右認定に反するものといわねばならないが、《証拠省略》によれば、右契約書の作成に関与した被告嘉一郎は原告側の求めに応ずることが実家である嘉男方と原告方との円満な関係に役立つものと考え、専らそのことを望んで、嘉男には正確な説明をしないまま同人に代わって右契約書に署名押印したことが認められるので、甲第二号証が右認定を覆すほどのものであるとはとうてい認め難い。

三  以上によれば、原告の賃貸借契約解除の意思表示は効力を生ずるに由ないのであるから、原告の本訴請求は、被告らに対し、別紙第二物件目録記載の建物につき東京法務局板橋出張所昭和四九年二月一四日受付第六〇一九号の所有権保存登記の抹消登記手続を、被告正之助に対し、同建物につき同法務局同出張所昭和五〇年三月二六日受付第一二二七九号の所有権移転登記の抹消登記手続を求める限度で理由があるのでこれを認容すべく、その余は失当であるのでこれを棄却すべきである。

(反訴について)

一  被告正之助の先代嘉男が喜之助より借り受けたのは旧建物であって、本件土地ではないこと、嘉男が旧建物を改築し、改築後の建物、即ち本件建物につき更に増築等を施して現況の本件建物を完成せしめるに至ったが、それらの工事により附加された物はいずれも附合によって建物の所有者である喜之助又はその家督相続人である原告の所有に帰したこと、したがって現況の本件建物は原告の所有に属すること、別紙第二物件目録記載の建物が現況の本件建物であることは、いずれも本訴において認定したとおりである。

二  してみると、被告正之助の反訴請求は、その余の点を判断するまでもなくいずれも理由がないことが明らかであるからこれを棄却すべきである。

(総まとめ)

よって、原告の本訴請求は、前記の限度で認容することとしてその余を棄却し、被告正之助の反訴請求はいずれも棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条、九二条本文を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 丹野益男)

〈以下省略〉

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例